KOHII
Vol.24 ジャズ喫茶で文化人の足跡を辿る

Journal

Vol.24 ジャズ喫茶で文化人の足跡を辿る

ちょっとコーヒー巡りをしませんか?行き交う人々、流れていく時間を見て感じながら、飲むコーヒーが絶妙に美味しいと思う私たちは、いつもコーヒーで繋がる街を歩くKOHII Walkersです。気の向くまま、コーヒーのアロマに溢れる街、それぞれコーヒーを楽しむ人々との出会いを独自の目線で写真ストーリーに記録し、ここでシェアします。 こうして同じ写真でコーヒー、ヒト、マチの関連性を描く人と繋がりたい、日本各地のKOHII仲間と一緒にコーヒーの魅力を広げていきたいです。 Jongmin, KOHII Walkers@Kobe

私の故郷には、地下鉄がない。地下鉄どころか、電車の駅も街から遠い。だからか、時々、地下鉄という機械的で、徹底的に計算された空間を不思議に思う。 地下鉄は都市で暮らす人々の足になる場所だ。一定の間隔を保って座る人々、決まった時間に到着する電車、なんども繰り返す同じアナウンス。システムによって規則性が保たれた地下鉄という空間において、自分だけが意志を持って動いているかのような間隔に陥るときがある。そんなはずはないのに。

神戸といえば、港、洋館、ジャズなどおしゃれなイメージがあるけど、個人的には小説家の村上春樹さんを思い出す。神戸の芦屋市出身の彼は学生時代から港から訪れる異国の文化に触れてきたらしい。だからか村上さんの小説は、少し皮肉なユーモアや落ち着いたシックな感じがアメリカの小説のようで格好良い。そう思えば、私は神戸という街を一人で歩いている村上さん的な人物に同化して街の風景を楽しんでいるのかもしれない。

個人的に好きな村上春樹さんのエッセイ「村上朝日堂の逆襲」の中にはスパゲッティ小説という造語が出てくる。これはスパゲッティを茹でるわずか数分でも楽しめる小説という意味らしい。スパゲッティを茹でる間にもつい手にとって読みたくなる小説って、どんなのだろう。 スパゲッティじゃなくとも、地下鉄に乗る時、近所のカフェに行く時になんとなく持って行きたくなる本はスパゲッティ小説に近いかもしれない。本一冊カバンに入れただけなのに少し学生時代に戻ったかのような妙な快感がある。

@Coffee LABO frank

中華街を抜けて、人影の見えない路地に入るとコーヒーの香ばしい香りがしてきた。3階建てのビル、煙突からは焙煎するときの煙がモクモクと出ていた。視界に見えてきたのは“Coffee LABO frank” と書かれた看板。

少し薄暗い通廊に入ると見えるコーヒー豆の麻袋とワインのボトル。階段を登り、2階に入るとネクタイをしているバリスタさんと目があった。話してみると、夜はナチュラルワインやコーヒーカクテルも提供しているようだ。店内にスタンド席があるのも印象的だ。イタリアのバルのような空間に魅せられ、コーヒーショップというより、コーヒーハウス、バーにいるような感覚になるのが新鮮だ。

カウンターでコスタリカのゲイシャを頼み、窓際の席に座って少し休憩。レコードプレーヤーから流れるシティーポップに耳をすます。音楽に浸り、気づくとコーヒーができた。 ゲイシャって言ってもいろんなゲイシャがあるのは知っているけれども、飲むたびに少し恐れ多い気持ちになる。近頃、様々なコーヒーがあるけど、ゲイシャは何かアウラを持っている気がする。frankで飲んだゲイシャはとても美味しかったけど、それ以前に私はこのお店の空間、音楽、人が印象的だった。コーヒーって奥が深く、難しそうだけどもっと気軽にコーヒーとコーヒーの周りにあるものを楽しんで良いんだなと改めて気付かされた。名前の通り、フランクに楽しもう。

そういえば、私がはじめてジャズ喫茶に行ったのも神戸だった。ジャズ喫茶って路地裏とか、地下に位置している印象がある。音漏れの問題もあるからか、薄暗いところにある傾向だ。村上春樹さんのファンになった高校生の時からジャズ喫茶という空間に憧れはあったものの、ドアを開けることができなかった。それから大学生になって、付き合いはじめた年上の彼女さんの前で意気がるために勇気を絞り出しお店に入ったのがはじめてのジャズ喫茶体験だ。

@ジャズ喫茶jamjam

だからここ、ジャズ喫茶jamamは、とても思い出深い場所だ。最初はどの席に座れば良いのかさえわからず慌てたけれども、今は、深煎りのコーヒーを片手に名も知らぬジャズを聴きながら過ごす休日が心地よい。ジャズの楽しみ方にマナーは必要だけど、ルールはないことに気がついたのだ。

日本にコーヒーが広まった歴史を語る上で、ジャズ喫茶は欠かせない要素だろう。足音を立ててブルースのリズムに乗る人の横で音楽を鑑賞しているのか、寝ているのかわからない会社員が座っている。遠くの席には音楽界における巨匠のような雰囲気が漂う紳士帽をかぶったおじさんが一人座り、コーヒーを飲んでいる。 同時代を生きるロマンティストの集う場がジャズ喫茶だと思う。都心のジャズ喫茶の何が良いかって、隣に座っているお客様が実は文豪だったという劇的な出会いの物語が生まれる場所だからだ。

店内では、Eddie HigginsのAutumn Leavesが流れていた。ピアノバージョンなのが印象に残る。音楽を聞いているうちに頼んでいたコーヒーが届いた。深煎りのブレンドコーヒー、心地よい苦味。これをカッピングするときはビターとか、オーバーロースティングといってネガティブな表現をするだろうけど、そこに嗜好品としてのコーヒーという視点は排除されている。嗜好品だからを免罪符にするつもりはないけど、少しビターな深煎りコーヒーも美味しいと思いたい気持ちは尊重したい。何にせよ古き時代の文化人たちが愛してきた苦いコーヒーなのだから。

名作が生まれる背景には、必ず舞台となる名店がある。コーヒーを通して文化人の足跡を辿る休日を過ごしてみるのも、また新たな視点でコーヒーのある暮らしを捉える機会になるのではないだろうか。

<今日のKOHIIコース>

@Coffee LABO frank 〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通3丁目3−2 今川ビルディング 2F

@JAMJAM 〒650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通1丁目7−2 B1F

A cup of KOHII with Love (執筆・編集:Jongmin)

コメント

まだコメントがありません。

アプリからコメントしてみてくださいね!