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ナポリの街と分かち合うコーヒー、カフェ・ソスペーゾに触れた夜

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ナポリの街と分かち合うコーヒー、カフェ・ソスペーゾに触れた夜

こんにちは! KOHIIクリエーターのJongminです。 みなさん、コーヒーを保留するカフェ・ソスペーゾについてご存知ですか? 「後から来る誰かのために先にコーヒー代を支払っておく」という優しさから生まれたコーヒー文化。 実は先日、カフェ・ソスペーゾの発祥地で言われているナポリのカフェ「GAMBRINUS(ガンブリヌス)」に行ってきました。 今回は現地で触れてみた”保留コーヒー”の文化、カフェ・ソスペーゾの体験記をお届けします。ぜひバックナンバーのカフェ・ソスペーゾについての記事も合わせて読みください。

100年にわたり受け継がれているカフェ・ソスペーゾ

GAMBRINUSは1860年頃に歴史の幕を開けます。ナポリ市民の社交場として重ねた歴史が長いだけに、今まで訪れた人物も多いのも特徴です。GAMBRINUSの壁にはオスカーワイルドやヘミングウェイといった世界的な作家たちがコーヒーを飲んでいるモノクロ写真が飾られています。また、棚にはメルケル元首相をはじめとする著名人が飲んだコーヒーカップも展示されています。

カフェ・ソスペーゾは第二次世界大戦後の不況をきっかけにはじまります。さらに、ナポリを含むイタリア南部は北部に比べて工業化が遅れた歴史があり、失業率が高く、所得差が激しいのです。 近年は移民・難民の受け入れも加わり恒常的な不況が続いています。ナポリに数日滞在しながら、私が驚いたことは昔の映画などでみた綺麗な景色よりも、ホームレスの多さや荒廃した街の様子でした。異国の私たちが勝手にイメージしていたファンタジーとは異なる現実。カフェ・ソスペーゾは今も続く不安定な社会情勢を背景にもしています。

しかし、厳しい時代の中でも一杯のコーヒーを分け合う一人ひとりの優しさは変わらず、カフェ・ソスペーゾの文化も、今も続きこの街に根付いています。

GAMBRINUSに入るとレジのすぐ隣に見える大きなマキネッタ(直火式エスプレッソマシン)。片手が入るくらい空いている蓋の中には、実際に誰かがおいていったレシートが入っていました。夕方頃に訪れた時レシートの数は多くはなかったのですが、前向きにそれだけ誰かにコーヒーが行き届いているのだろうと捉えました。私も微々たるものですが、一杯分のレシートを入れてきました。

カフェ・ソスペーゾの文化が伝えてきたメッセージ

今年の2022年3月にはイタリア地域議会の主導で、北部ヴェニスから南部ナポリに至る「イタリアのエスプレッソコーヒーの伝統と文化」のユネスコの無形文化遺産へ登録する試みがありました。 そこには、ナポリをはじめ、イタリア各地に広がったカフェ・ソスペーゾも含まれるでしょう。しかし、イタリア文化庁は「コーヒーの伝統と文化が何かであるか明らかではない」と回答しました。

誰かが残したコーヒーが、顔も知らない誰かに供される、匿名で行われる行為。決まったコミュニティがある訳でもなく、目に見える形で蓄積やルールが決められることもない無形の文化。イタリア各地で、カフェ・ソスペーゾに取り組んでいたカフェの文化が途切れてしまうことも多々あります。 しかし、Euronewsといった主要放送局のニュースでは、2020年からのパンデミックによる危機に伴いカフェ・ソスペーゾが復活したという報道もあります。

カフェ・ソスペーゾの本質は、分け合いの精神とコーヒーをきっかけに生まれる地域連帯かもしれません。カフェ・ソスペーゾの文化が100年間、残し伝えてくれたメッセージは、見知らぬ誰かと思いやりを分け合う喜び。お金ではなくコーヒーで分け合えるひとときの寛ぎや、心のゆとり。それがナポリらしいコーヒーの在り方なのでしょう。

誰かにとっては一杯のコーヒーはゆとりある嗜好品かもしれませんが、他の誰かにとってはとてつもない贅沢品なのかもしれません。コーヒーに限らなくとも、何かの媒体を通して無償の「一杯」の思いやりを分け合うことで、カフェ・ソスペーゾの精神を受け継いでいきたいですね。 A cup of KOHII with Love (執筆・撮影:Jongmin)

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