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Vol.22 雨宿りをしにコーヒー屋へ向かう

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Vol.22 雨宿りをしにコーヒー屋へ向かう

ちょっとコーヒー巡りをしませんか?行き交う人々、流れていく時間を見て感じながら、飲むコーヒーが絶妙に美味しいと思う私たちは、いつもコーヒーで繋がる街を歩くKOHII Walkersです。気の向くまま、コーヒーのアロマに溢れる街、それぞれコーヒーを楽しむ人々との出会いを独自の目線で写真ストーリーに記録し、ここでシェアします。 こうして同じ写真でコーヒー、ヒト、マチの関連性を描く人と繋がりたい、日本各地のKOHII仲間と一緒にコーヒーの魅力を広げていきたいです。 Jongmin, KOHII Walkers@Tokyo

どこか満たされない午後、ふと、まだコーヒーを飲んでいなかったことに気づく。毎朝、起きてからの10分間、コーヒーを淹れるか、それとも二度寝をするか、二者択一で悩まされる。 しかし、とても悲しいことに、人は迷ったら楽な方を選びがちだ。人生は常にこうした選択の連続。道に迷った時も、左へ行くか右に向かうか選ばなければ前に進めない。もしくは、Aを選ぶか、Bを選ぶか。二度寝を選んだ私は、怠惰だった数時間前の自分を反省しながら、落ち着かない昼を過ごす。

雨が降る日は、いつもよりコーヒーが飲みたくなる。なぜだろうか。科学的な理由としては、湿度が高いことにより、コーヒーを挽いたり、抽出する際に発生する香りの粒子が空気中により広がることで、感覚的に美味しく感じるようだ。シアトルのように雨が多い街でコーヒーショップが盛んなのは、こうしたことが関係しているのだろうか、とふと考えを巡らせる。 とにかく理由は何でも良い。窓の外に降る雨を眺めて、ゆっくり飲むコーヒーはいつもより特別だ。

今日は書店に行くことにした。別にどうしても買いたい本があるという訳ではないけど、心落ち着く場所を探し求め、書店に行き着いたのだ。とりあえず、目で追う暇もなく、常に目新しいもので飽和状態な東京の中心部から離れたかった。 変化とは、日常のスパイスだけど、スパイスもかけすぎたら料理が辛くなる。変化に適応するためには、ゆとりが必要なのだ。だから、書店に行くことは生活の中でゆとりを持つことであり、誰にとっても必要なことである。ついでに心に響く本にも出会えたら嬉しいとちょっとした期待も持ち、改札を出る。

改札を出ると、外には傘を差し早足で歩く人々が見えた。そういえば、雨の日にはStingのEnglish man in New yorkを聞くのがすきだ。イギリス人は雨の日にも傘は差さないと、どこかで聞いたことがある。子どもの頃はかっこいいと思ってたけれど、今の私は単に傘を買うための500円がもったいないと思ってしまう。心まですっかり日本人になったものだ。だけど小雨に濡れながらも、走らないEnglish manを気取って、書店に向かう。

@モトヤエクスプレス代官山店

モトヤエクスプレスは、1996年に移動喫茶モトヤエクスプレス1号店として路上営業をスタートしたらしい。ここ、代官山店はまさにその1号店。トレーラーで移動しているモトヤエクスプレスでは、電気ではなくプロパンガスを使用してエスプレッソを入れており、このスタイルは世界でも珍しいとか。自由に移動できるならいつ旅立っても良いのに、同じ場所でコーヒーを淹れているマスターに敬意を払う。だからか、お客様は地元の常連さんが多い。

車内には、年季の入ったイタリア製のエスプレッソマシンが見える。親しい名前のモカ・ブレンドを使用したホットアメリカーノを頼み、少しだけ雨宿りをした。一杯のコーヒーが出来上がるまでの間、常連さんとマスターが数分間交わす会話を盗み聞きするだけで、心がほっとする。

エスプレッソマシンが立てる音を聴き込んでいたら、コーヒーが出来上がった。モカブレンドのアメリカーノ。想像通り、期待を裏切らない味がかえって落ち着くのだ。モカブレンドというシンプルな響きも好きだ。心地よいコーヒーの香りが雨の中で広がる。

複雑な小路を抜けて気づいたことだが、代官山は、静かで落ち着いた雰囲気の街だということ。隣街が渋谷だというのに、古くからの老舗も残っている。少し街外れに位置しているから、急速な開発の影響が少ないのだろうか。でも、洗練された服屋やカフェも多く、それがつくる街並みの風景は若い世代が描くライフスタイルの道標のようだ。東京に来る度に訪れたくなるお気に入りの場所になりそうだ。

写真を撮りながら、駅から数十分ほどゆっくりと歩いたら代官山の蔦屋書店に辿り着いた。 書店と書かれてはいるが、私たちが慣れた書店の概念と違うことに、入り口に立った瞬間、気がついた。正確に言えば、既存の書店と違うというよりも、書店の進化系に近いだろうか。創業者である増田宗昭さんがイメージしていた“森の中の図書館”で温かい日差しを浴びながら、一杯のコーヒーを飲めるゆとりと、心を交わす人と楽しめる空間が今、私の目の前にあった。だから、ここ代官山の蔦屋書店では、旅行者であれ、住民であれ、癒しを得ることで幸せを感じるのではないかと思った。

気になる本があっても、それを買うとき常に読書に対する気持ちが試される。限られた時間を言い訳に、買った本を読まないと己の怠惰さに罪悪感を感じてしまう。これ以上は、増えてほしくない本棚の中を想像しながら、簡素化したライフスタイルを追求する現代人が、無数にある本の森の中で、今の自分に必要な一冊を選ぶのは、難しいことだと改めて実感する。でも私というコーヒーオタクはコーヒー愛に伴う自尊感情を守るために、Standartの新刊には目が向いてしまう。気づくと私はレジ前に立っていた。

@it COFFEE

書店を出て駅まで向かう途中、また雨が降り出した。駅まで走る体力もないので、近くのコーヒーショップで雨宿りをすることにした。ふいに降り出した大雨に、店内はほぼ満席。しかし、少し暗めの照明だからか、隠れ家のような落ち着く空気感が漂う。入り口から奥にも席があり、一人で読書や考え事を整理するとき良さそうだ。 カウンターでブラジルのコーヒーを頼み、奥の席に座って本のページをめぐった。

コーヒーとアートに関連するコラムに目が留まった。確かにコーヒーとアートは、特別な日の赤ワインと肉料理のように相性良い。白いカップの中にあるコーヒーという液体は単なる飲み物だ。しかし、口にする瞬間コーヒーを通して私たちの想像力にスイッチが入る。この現象を私はコーヒー的想像力と名付けたい。 心に浮かぶ情景が言葉を通して一つの詩になるのと同じことだ。もはやコーヒーは、単なる飲み物としての概念を超えて多くの芸術家にインスピレーションを与える着火剤である。良いコーヒー一杯は、豊かなフレーバーに五感が研ぎ澄まされ、芸術家たちは彼らの筆とペンを通して感覚的な比喩でコーヒーを表現してきた。

コーヒーショップで雨宿りをする人々。片手にする黒い液体に一人ひとりがインスピレーションを受け、ゆっくりと想像を巡らす夕方。コーヒーを通して人々の暮らし、文化、芸術が混ざり、溶け合うのだと改めて気付かされた。

<About Jongmin>

韓国出身、大分在住。コーヒーを片手に彷徨う人。時々、コーヒースタンドのPOP UPイベントをしながら、2021年からKOHIIにて記事の執筆に関わる。物書き、写真が好き。コーヒーを通して、愛とか孤独といった目には見えない類の感情を大切にしたい。

<今日のKOHIIコース>

@モトヤエクスプレス 代官山前東急駐車場 東京都渋谷区代官山町20-14

@it COFFEE 代官山 東京都渋谷区恵比寿西1-34-28 代官山ファーストビル1F 102

A cup of KOHII with Love (執筆・編集:Jongmin)

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