KOHII
渡り鳥・宿・遠方のコーヒー

Meets

渡り鳥・宿・遠方のコーヒー

さまざまなジャンルで活躍されているクリエイターさんたちは、普段どのようにコーヒー ライフを楽しんでいるのでしょうか。KOHII meets Creativesは、業界をリードする人たちやチャレンジし続ける人たちについてコーヒーを淹れながら、飲みながら深掘りしていく企画です。

本日のゲスト

アリソン 理恵 一級建築士事務所ara コーヒーショップMIA MIA、キオスクIAMをご主人と一緒に運営 R=理恵さん、K=KOHII

理恵さんと知り合ったのは2019年秋の東京でした。音楽からコーヒーまで、多彩な趣味に共通点があって、初対面で親近感がグッと湧きました。当時、探していた事務所のスペースで、カフェを始めたいというお話も伺っていました。あれから一年半の月日が経 ち、世界が大きく変わる中、東京・東長崎にて、コツコツMIA MIAを立ち上げた理恵さんの姿を遠くから眺めていました。元々オーストラリア先住民の言葉のひとつ、ワダウル ング語で、「mia-mia」は家族や友人、通りがかった人などが集うシェルターとして建てられた小屋をいいます。地元で親しまれてるお店を見守りながら、育児中に設計の仕事も徐々に再開している理恵さんと久しぶりにゆっくり話をしてきました。コロナ中に生まれ育ったカフェ、建築家として未知の運営世界、知らなかった町で、まるで渡鳥のように自ら宿を新築されている彼女の心境を聞かせていただきました。

建築から共築へ

K:改めて、東長崎に拠点を置いてからの活動を教えて頂けませんか? R:事務所としては、今まで通り住宅やオフィスなどの設計をやりながら、新しくカフェのスタートアップや設計の依頼の話を受けたりしています。事務所が入る「壱番舘」という、MIA MIAから歩いてすぐの東長崎地元の小さな集合住宅の管理もやることになり、今までやったことない運営も同時に始めています。 日々のお掃除から始まって、住民たちと毎日のようにコミュニケーションを取ったり、コミュニティイベントを企画したり、住む環境をよくするアイデアを提案したり、設計事務所だからできることを色々考えて、やっています。

R:ここの事務所は週末だけギャラリー・キオスクとしてオープンします。ちょうど今 「Lightly」という新しい展示会を準備しているところです。オーストラリア人デザイナーCindy-Lee Daviesによる、日常生活に彩りを与える、遊び心溢れる色と形のプランターやインセンスホルダーをご紹介します。このようなカルチャーイベントも継続的にやっていきます。

K:可愛いデザインですね!その上、MIA MIAも夫婦で運営されているんですね R:そうですね、今は基本的に事務所の方にいますけど、最初はスタッフたちと一緒にちゃんとしたバリスタトレーニングを受けました。大変だったんですけど、毎日朝6時30分から夜の23時ごろまでお店にいてお客さんたちや街の人々とよくお話ししていました。 夫婦とも初めて飲食店をやっているので、経営のこととかまだわからないこともたくさんありますが、場所をどう設計すれば楽しく使えるだろう、ということは常に考えています。 コロナ禍は大変でしたが、そういったことを考え、地域の人たちとゆっくりお話する時間が得られて、すごく良かったと思います。今は、スタッフ達だけでもお店は問題なく回るようになったのですが、ヴォーンはほとんど毎日お店にいますね。

K:設計以外に、初めて運営に挑戦して、最も大きな変化や感想はなんでしょう? R:設計だけをやっている時はデザインしながら、こういう可能性があるという話はできますが、思った通りになっているかどうかということにまでなかなか関われませんでした。使い始めてからの空間の可能性については、実際に自分でやってみて、見えてきたことがたくさんありました。 例えば、デザイナーとしてマテリアルの組み合わについてはよく考えるけど、それを創る人のチームメーキングはそこまで気にしていなかったというか。場所を運営をしてみると、みんなとずっと関わっていくことになるので、チームメーキ ングはすごく大切なことだと分かってきました。

あとは建築が場所に与えるインパクトの強さもすごく感じました。MIA MIAと壱番舘はあまりデザインしすぎないようにと思って創ったんですけど、場所によってインパクトがあって、例えば最近作った畑のように、街のど真ん中に急に畑が現れてくることによっ て、子供やお年寄りや若い人もみんな引き寄せられて、コミュニケーションが起こるようになりました。自分が今まで考えていた以上に、デザインの力があるんだということを日々感じています。 K:建築家として、この一年ちょっとの旅を振りかえっててみると、どうですか? R:今まで通りロジックのある設計はしていますけど、やはりチームメーキングと、日々のコミュニケーションが大事だなと実感した一年でした。 コロナ中にMIA MIAをオープンした時、来てくれたおじいちゃん、おばあちゃんと知り合って、本当に良かったと思います。歩いていける距離の職人さんが創ったことによるインパクトは大きいかったと思います。工事中に立ち寄ってくれた職人さんの知り合いの方々や近所の人たちは、開店前から関わっているこのお店のことを自分の場所だと思ってくれています。

建築ってこういう時間的な人の力と切り離せないんだなあと実感しました。 日本のデザインってかなり洗練されて、先鋭化してきていて、みんな物凄くデザインスキルが高く、格好いいものが作れるようになってきているなと思っています。ただ、その先に何を見ているかというビジョンは描けていなくて、デザイン自体が目的になってしまっているんですね。デザインって、人とのコミュニケーションとか、人の動きを変えるもの だということに一度立ち戻らないといけない気がしています。 また教育の現場に戻るので、これからデザインをやりたい若い子たちには、付加価値としてのデザインではない、本質的なものとしてのデザインををどうやって創っていくかとい うことについて言語化して伝えたいなあと思っています。

コミュニケーションツールとしてのコーヒー

K:なるほど!まるで地元のコミュニティーと一つのチームになって共同構築をしてきた ようですね。素敵です。そういえば、コーヒーは前からお好きでしたよね、きっかけは? R:オーストラリアのメルボルンにいた時期ですね、初めてコーヒーを美味しいと思いま した。メルボルンの人たちにとって生活の一部にコーヒーがあるので、私もその流れに 乗ってみて、いろんな店を回ってみました。 どこに行ってもコミュニティーの中心にコー ヒー屋さんがあって、その場所ごとにカラーが違います。それぞれ美味しいし、楽しいと 思いました。それから日本に帰ってきてもう10年以上経ちますが、今もずっと趣味で主人とコーヒー屋さん巡りをしています。 K:今もおうちでコーヒーを毎日淹れていますか? R:そうですね、毎朝主人が淹れて、一杯飲みます。それからまたローカルのコーヒー屋さんでもう一杯を頼みます笑。自分たちがお店をやっていても、ローカルの店も好きですね。

K:MIA MIAをやり始めてから、コーヒーへのイメージは何か変わったりしましたか? R:変わりましたね。トレーニングを受けて、お店で淹れてみたら、産地によって、淹れ方によって味がこんなに違って出てくるんだと初めて知りました。また人によって好みも それぞれあると気付きました。コーヒーって多様性があって楽しいですね。淹れる時も、いろんな作業から手を止めて、集中できるあの特別な時間が大好きですね。 初めて緊急事態宣言が出た時に、お店を閉めるかどうか悩んでいた時がありました。その時によく来ている70代の方にどう思いますかと聞いてみました。「こういう場所は生活に必要な場所だから、開けといてください」と彼が言ってくれました。「美味しいコーヒーも飲めないような生活になっちゃったら、倒れますよ。」と。そう言ってくれて本当に嬉しかったんです。 コーヒーは他の飲み物や食べ物と違って一気に飲めないから、飲んでいる間にちょっとできた時間で、コミュニケーションのきっかけを創ってくれます。コミュニケーションツールとして、可能性がすごくあるものだと思います。

町暮らしの提案者、システムデザイナー

K:これから東長崎の経験やカフェーを通してやりたい新企画とかありますか? R:街にずっといて気づいてきたのは、私たち建築家のスキルが必要な場面はいっぱいあるなということです。今のように人繋いでネットワーク化して、コミュニケーションしながら、現場でそれぞれの人たちの力を発揮できるような機会をもっと創れたらいいなあと考えています。 コロナで移動できない、外に出れない時期があって、住宅街や自宅で過ごしている中、自分が住んでいる場所を見直したいと思った人はたくさんいると思いますが、そこで建築家の私たちが、一緒に考えて、もう一度街を使って何ができるかを提案する時代になっていると思います。 そういうことに気づけたのは、設計から運営までをコミュニティの一員という意識でやってきたからだと思っています。ちょっとでも自分の住む地域をよくしたいし、小さな活動でも街を良くできるんだよと、この街で実践してきたことをもとにドキュメンテーションしてお見せしたいですね。

それに最近、生物のエコシステムのように同じ領域に暮らしている生物が、互いに依存しあって生きている状態を、建築・デザインの力で作っていけるのではないかと思っています。設計とスタートアップまでやって、地域におけるこういうシステムができていれば、 管理者の手が離れても循環できるようになります。 カフェって、いろんな人が来るので、みんなが街を楽しくできる可能性があると思えば、 自然にコミュニケーションしたいし、面白い人がいれば、繋げたいし、そこでうまく情報共有しておけば、ネットワークは作れます。ものだけではなく、システムまでデザインし た方がいい。東長崎だけではなくて、どの街にも可能性があり、その町にあったバランスの良いやり方があると思います。

MIA MIAは、お店に来た人たちに、いつでもコミュニケーションのきっかけを作ろうと 思ってやっていいます。街の中に色々な場所があった方が楽しいと思っていて、1人になりたいときに行く場所もあれば、人に出会いたいときに行く場所もある。そういった待ちの懐を深める場所の選択肢を増やすようなコーヒー屋さんでありたいと思っています。 コーヒーで繋がる可能性を伝えるコラボレーションをこれからもどんどんやっていきたいですね。あとは今後メルボルンでもお店を作りたいですね。いろんな可能性を考えるのが大好きなので、いろんな場所に行って違う空間と味の好みがあるのを見てみたいなあ~

アリソン 理恵

一級建築士事務所ara コーヒーショップMIA MIA、キオスクIAMをご主人と一緒に運営

MIA MIA

IAM

Two cups of love for KOHII (取材、執筆、編集:Rika 撮影:Shimakou)

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