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イエメンのコーヒー事情

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イエメンのコーヒー事情

コーヒーを題材にした音楽といえば、コーヒー・ルンバがあります。歌詞の中で、琥珀色をした飲み物として紹介されるモカ・マタリ。今回はモカコーヒー発祥の地、イエメンのコーヒー事情を紹介します。イエメン出身のコーヒーインポーターであるMocha Originsのタレック(Tareq)さんをインタビューし、リアルなイエメンのコーヒー事情をユーザーのみなさんにお届けします。 K:KOHII、T:タレックさん

ギシルからはじまるイエメンのコーヒー文化

K:イエメンならではのコーヒー文化は何かありますか? T:もちろんあります。イエメンにおけるコーヒーの歴史は600万年前に遡ると言われています。当時からアラビアの商人たちによって外国へコーヒーを輸出していたようです。イエメンの中ではコーヒーの果肉を乾燥させてつくるギシル(Qishr)と呼ばれるティーをよく飲みます。つまりコーヒー豆は輸出し、果肉は国内で消費しているのです。ですので、ギシルは昔からイエメン人に親しい飲み物です。 また、それぞれの家庭にその家族ならではのギシルのレシピがあります。母の料理レシピに近いイメージですね。カルダモンのようなスパイスを足す家庭もあれば、ミルクを入れる場合もあります。

photo by Ayaneshu bhardwaj on Unsplash

ギシルの定義は幅広く、コーヒーチェリーの果肉を使った飲み物、というイメージでしょう。一方でコーヒーはイエメンの中で富裕層の嗜好品という認識が強いです。その理由としては、コーヒーを選別機にかけた時に、品質の良いコーヒーと、品質がよくないコーヒーを分けますが、国内では比較的品質が良くない安価なコーヒーが消費される傾向にあるからです。ですので、イエメン人はコーヒーに砂糖やミルク、またはスパイスを足してチャイに近い感覚でコーヒーを楽しんでいます。これもまたイエメンならではのコーヒー文化です。

しかし、近年はイエメンの中でもスペシャルティコーヒーの需要が増えています。ハンドドリップをはじめ、フレンチプレスなど抽出方法も多様化しています。ナチュラルに限らず、アナエロビック、ハニープロセスなど農家さんも多様な精製方法を試しています。生産国の人がコーヒーを飲まない実態についての話はよくあることだと思われますが、少しずつイエメン人の中でも、ストレートでコーヒーを飲む文化が生まれています。 K:スペシャルティコーヒーはイエメンにどのような変化をもたらしていますか? T:最も大きな変化は、コーヒーの商品価値が向上し、カートの栽培の減少につながったことでしょう。スペシャルティコーヒーの概念が広がる以前は、各地域のブローカーがコーヒー豆を安価にまとめて購入していました。ですのでイエメンでは、コーヒーよりもカートの方が利益になるため、コーヒー栽培をやめカートを栽培する農家さんが増えてました。しかしカートは、覚醒作用がある麻薬的な作物で、国民の健康によくないだけでなく、輸出することもできないためイエメンの経済に良い影響を与えません。

しかし、現在はスペシャルティコーヒーという概念が広がり、品質の良いコーヒーを公正な価格で取引できるようになったので、再びコーヒーを栽培する農家さんも増えてきました。実はハラーズ地域では、市長によってカートではなく、コーヒーを生産するように政策的に推奨されています。このようにスペシャルティコーヒーはイエメン国内に新しい風を吹き込んでいます。

続く内戦の中、コーヒー産業の状況

K:内戦がコーヒー産業に与えた影響は何かありますか? T:まずコーヒー生産に関しては、生産コストが2倍、3倍ほど高くなりました。内戦により、ガソリンの価格が向上したことが主な原因です。また、空爆によって水道設備も壊れ、水を農園に運ぶ必要性が生じ、追加にコストがかかります。厳しい状況の中でも時間と労力をかけてコーヒーを生産しても、安全上の問題で、内戦が始まった直後はコーヒー輸出量がゼロに近い困難な状況でした。 現在は、人々も内戦の状況に慣れてしまっているので、なんとか打破策を模索しています。状況は少しずつ改善されている傾向にはありますが、あいかわらず内戦は続いているので、厳しい状況はまだ続くと思われます。

それでも毎年、スペシャルティコーヒーの輸出量が増える毎に、農家さんの利益にも還元され、品質の向上にもつながっています。スペシャルティコーヒーの場合、品質管理を目的にハンドピックなどの工程を要します。それらの作業は主に女性が行うので、農家さんの利益向上に限らず、現地の雇用創出、女性の社会的地位の改善にもつながっています。

アラビアの文化のすべてを伝える

K:今後はコーヒー以外の作物も取り扱う予定と聞きましたが、何か理由はありますか? T:そうですね。今年からはコーヒーに限らず、デーツやギシルも取り扱う予定です。アラビア文化圏ではコーヒーとデーツをペアリングする楽しみ方もあるので、日本でも、アラビアンな楽しみ方を伝えたいです。こうした機会を通してコーヒーに限らずイエメンやアラビア文化圏の魅力に触れてほしい想いがあります。

一人の消費者としてできること

K:一人の消費者としてイエメンのコーヒー生産をサポートできる方法は何かありますか? T:まずはイエメンのコーヒーを目にする機会があれば、ぜひ飲まれてみてください。イエメンの個性溢れる味の虜になると思います。 また消費者側からすれば、せっかくコーヒー豆を買うなら品質の高いコーヒーを飲みたいという気持ちがあると思います。しかし、コーヒーは作物ですので、品質が不安定な原因には不可避な要素も多くあります。農家さんも毎年、より良いコーヒーを生産するように努めているので、信頼関係を基に農家さんと継続的に取引をすることで、農家さんも安心してコーヒー生産に励めると思います。

コーヒーのクオリティーは主にカッピングを通して評価しますが、実際に抽出をして、飲んでみないとわからない要素もあるので、Mocha Originsではカッピング用と抽出用のサンプルの両方をロースターさんに送っています。コーヒーを選ぶ際に品質だけに重きをおかずに、イエメンという国、Mocha Originsの取り組み、ロースターさんの想いなど様々なストーリーに触れ、長い期間、継続的にイエメンのコーヒーと関わって頂きたいと願います。

A cup of KOHII with Love (執筆:Jongmin)

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谷口珈琲
谷口珈琲 イエメンにおける珈琲の歴史が600万年前って合ってますか? 人類誕生より前の数字だったので気になりました🧐