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Vol.33 神戸の偶然に身を委ねる

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Vol.33 神戸の偶然に身を委ねる

僕たちはいつもコーヒーで繋がる街を歩くKOHII Walkers。気の向くままコーヒーのアロマに溢れる街で、コーヒーを楽しむ人々との出会いを独自の目線で切り取り、ここにシェアします。 僕たちはコーヒー、ヒト、マチの関連性を描く人たちと繋がりたいです。日本各地のKOHII仲間と一緒にコーヒーの魅力を広げていきます。 Seiya, KOHII Walkers@Kobe

目的が無いことを楽しむ

僕は東京の新宿から夜行バスで神戸に向かった。 今回は旅行でもない。何となく思いつきで神戸に行ってみようと思った。 あえて言うなら目的が無い旅を楽しむのが今回の目的になる。 朝方に到着した僕は早速コーヒーが飲みたくなった。 時刻は7時前。やっているお店はチェーン店くらいだろう。 僕は検索もせずに、とりあえず街の中心部に向かった。

「やっぱりあった」 僕はスターバックスにたどり着いた。 ここで改めてコーヒーチェーン店の素晴らしさを感じた。 どこに行っても同じ味を提供していて、Wi-Fiやコンセント、リラックスできる環境が整っている。これは当たり前なのかもしれないけど、けっして当たり前じゃない。 慣れない土地に行くと余計にコーヒーチェーン店の有り難みが分かる。 チェーン店は色がないとか言われがちだけどそんなことはないし、安心できる場所が全国にあると思うと何だか心強いしホッとする。 僕は朝食としてホットコーヒーとシナモンロールを楽しみながら、パソコンを開いて少しだけ仕事をした。

気がついたらお昼をすぎていた。 さて、神戸はどのような街なのだろうか。いよいよ目的のない一人旅のはじまりだ。

こだまする心の声

神戸は観光地というイメージだ。綺麗なスイーツも多いと聞く。 とくに意外だったのは、横浜で言う中華街のようなエリアがあったこと。 今日の気温は30度を超えているにも関わらず、中には行列をなしているお店もちらほらあった。観光地ならではの光景だが、見ているだけで少し暑苦しい気持ちになってしまう。 しばらく歩くと射的が楽しめるお店を見つけた。正直やりたかった。 でも、一人でやると虚しくなるだろうと思い、今回はやらなかった。一人で来ると楽しめないこともあるのは分かっていた。いつか友達と来たい、なんなら恋人や家族ができたらこういう場所で思い出を作れたらいいなと思った。 一人旅だとこんな感じで心の声が増えてしまう。

まだお昼ご飯を食べていない僕は、コーヒーが飲めてランチも楽しめるお店を探していたが、今回の旅の目的は目的がないことを楽しむこと。ネットで検索をかけてヒットしたお店でランチを楽しむのは今回の旅っぽくない。 お腹はひどく空いていたけど、目的に囚われずにあてもなく歩く時間が心地よかった。僕は淡々と歩いていると、自然に中心街から離れていった。 しばらくすると、年季の入ったWelcomeと書かれたマットが目に入った。

パーラーアットホーム

僕はお腹も空いていたし、喉も乾いていた。 顔をあげて目に入ったのは「パーラーアットホーム」とうっすら書かれた看板。 「何屋さんか分からないけどコーヒーは置いてありそう」 そんな根拠もない雰囲気を感じて中に入った。 入った瞬間に「お店が14時半だけど大丈夫?!」とお店の女将さんであろうおばぁちゃんが厨房から話しかけてきた。 この時の時刻は14時ぴったり。残り30分しかなかったけど「大丈夫です」と返事を返した。自分が来店していなければ早くお店を閉めていたであろうに。若干申し訳なさを感じたけど、他にお店はなさそうだし、何より僕はこのお店のことをもっと知りたいと思った。 都会ではなかなか見ることができない年季が入っているお店だ。 メニュー表は外にあると言われ、見に行くと定食が全てワンコイン、500円と言う破格の値段だった。 「これで成り立っているのか...」そう思いながらも、僕はしょうが焼き定食とアイスコーヒーを頼んだ。

店内には一人のおじさんとおばぁちゃんと僕だけだった。 店内をじっくり眺めようと思っていたら、チェーン店ばりの提供スピードで頼んだしょうが焼き定食が運ばれてきた。 味はもちろん美味い。 それに、あれだけ食と空間に向き合って食事をしたのは久々だった。

「もっと知りたい」お店のことを

僕はお母さんと話してみたくなって勇気を出して話しかけてみた。 「このお店はどのくらいやられてるのですか?」 「私は37年立ってるよ」 37年もお店を続けているなんて、本当にすごい。一度話しかけるとお母さんの話が止まらなかった。 しばらく話すと、あと3年でお店を閉めようかと考えているそう。でも、地元の人から続けてほしいと言われているみたい。僕も今日がはじめてだったけどこのお店がなくなってほしくないと思った。 僕とは全く違う人生を歩んできている人の話を聞くとやっぱり勉強になるし、もっともっと話を聞きたくなってしまう。あっという間に閉店の時間がきてしまった。

一旦のお別れ

「お会計をお願いします」 お会計は680円。アイスコーヒーはたったの180円だった。 アイスコーヒーの味は、正直普通だった。でも、僕はコーヒーがある空間を楽しんだし、とても満たされていた。どこの産地の豆かも分からないけど、コーヒーの楽しみ方はいろいろあるよね。 「また必ずきます、それまでお店続けていてくださいね」 最後に一旦の別れを告げてお店を後にした。 僕はこの旅の成功をすでに感じた。それぐらい良い出会いだった。 今回の旅は面白くなりそうだ。僕はあてもなくさらに歩き続けた。 僕はふと神戸にはあのコーヒー屋さんがあると思い出して、久しぶりにスマホを取り出した。

BEYOND COFFEE ROASTERS

BEYOND COFFEE ROASTERSは、神戸市中央区・三宮にある高品質コーヒー専門店。 販売所ではコーヒー豆、クラフトチョコレート(USHIO CHOCOLATL)、ナッツバター(DADA NUTS BUTTER)、コーヒーリキュール(Sunday's COFFEE SHOCHU)の販売や、ドリンク提供を行っている。 僕はこのコーヒー屋で衝撃の出会いをする。 結果から言うと、このコーヒー屋に2時間滞在した。出会ったのはコーヒ屋のオーナーを含めると6人。大阪のおばちゃん、絵本作家のご夫婦、南米の起業家を支援している大人たちだ。 普段出会うこともないはずの人たちに巡り会った。コーヒーがある空間ならではの出来事。僕たちはいろんな話をした。 24年間生きてきた中で、そしてこれまで学生として受けてきた授業の中で1番おもしろい社会の授業を受けた感覚だった。

今回感じたのはコーヒーの力、とういうよりかはお店に立つ人の魅力だ。 僕はよそ者でふらっと立ち寄ったけど、地元の人たちは皆んなオーナーに会いにきているようだった。それにお客さんもこの場所に来れば「誰かと巡り会える」と思って足を運んでいるようだ。お店は生きている。

裏の楽しみ方

僕は最後に神戸を楽しもうと思った。 神戸と言えばここ、メリケンパーク。 もちろん、SNSで見かけるKOBEと書かれたオブジェもちゃんと見たし、綺麗だと思った。でも、その帰り道に見えるこっちの景色の方が綺麗だと思った。 今回の旅はあえて目的を作らずに、思いのままを楽しんだ。偶然を引き寄せて、今に集中できた。これは表の楽しみ方ではなく裏の楽しみ方とも言えるかもしれない。 こんな時代だからこそ、偶然に身を委ねて旅をするのも悪く無い。 A cup of KOHII with Love (執筆・撮影:Seiya)

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