KOHII
皆が幸せになるサステナビリティの形(後編)

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皆が幸せになるサステナビリティの形(後編)

ゲスト

le fleuve (ル フルーヴ)ショコラティエ 上垣河大さん (本文中 K=KOHII、U=上垣さん)

U:きまぐれ不定期便も一つの方法ですが、根本的に今の時代に合ったビジネスモデルを考え直すべきだと思っています。例えばパンを自由に選んでトレイに取る買い方は、30年や40年前に流行ったビジネスモデル。物を増やして作って、たくさん買って、が良かった戦後の時代のものがまだ残っているんです。 でも今は逆にものが溢れて、いつでも何でも選べるだけに選ぶのが難しいし、無駄も多い。今続けているその仕組みが、時代に合っているのか?は、常に問い続けるべきだと思います。 これは生産者側の働き方にも通じる事。製造販売業は、受注があるから成り立つけれど、受注を増やすと休みがなくなる、というジレンマがあります。常に需要にこたえる必要がある事で、働き続けて、ロスも出て、忙しいお店なら1日、2日のお休みも謝らないと取れません。それは自分には合ってないな、と感じました。もの作りの仕事では、アウトプットを続ければどうしてもアイデアは枯渇します。インプットする必要があるのにその時間がないのでは本末転倒です。美術館でこんな展示をやっているから行きたいな、と思ったら、休める余裕がある、そんな風でありたいです。 僕自身考えて能動的に動くことが好きで、決められた時間に決められた場所で決められた仕事をする、というのが昔から苦手だったという事もあって、うちではバイトさんが工房の休みを決めます。共有カレンダーにそれぞれ来たい日時を入れてもらって、誰も来ない日があったらその日が休み。(笑)フルタイムでは難しいけれど、時間が余っている、そんな人たちが働きやすいよう、地域雇用でバイトの方に来ていただいています。 最近は本格的に経済の勉強も進めています。お店をして、人を雇って来てもらって、家族がいて、という時に、自分だけがいい、では続きません。その分、周りの人が大変な思いをしたり。お菓子屋さんという、美味しくて特別な時間や価値を提供する場所で働いている人が疲弊するような仕組み、どこかにしわ寄せが行く働き方や仕組みはよくないと考えています。

K:不登校の学生さんに、ご自身の経験も含めて工房の案内やお仕事について話したりされているそうですね。今いる場所に居心地が悪いと感じている人に、何かメッセージはありますか? U:まずは遊びに来て!でしょうか。僕は自分が不登校だった時に、知り合いのお兄さんで同じように不登校を経験してから個人事業主として庭師をしている人に出会って、かっこいいと思ったしすごく励まされました。僕も同じように、仕事って色々あって、世界は広げた方がいいよ、というのを伝えられたらと思ってやっています。大概のことは、知っている事からしか想像できないものですから、色々な物や考え方、やり方に触れるのは大切だと思います。 僕は自分に素直で、媚びないし、人に興味がなかったりするところがあります。それが原因で落としているところもあるかもしれません。でも、この環境で、今のスタイルで自分の心地よい方法で続けられるのが一番良いと感じています、自分の状態が良いとそれってお菓子にも現れると思います。良くも悪くも、僕はストレスが我慢できなくて。我慢できる人は、我慢してしまうんですよね。でもそれだとしんどくなっちゃいますよね。

U:この間ローカルのテレビ番組の取材を受けたんです。録画を見てみると、自分があんまりゆっくり話しているのでびっくりしました。今住んでいる地元では時間がゆっくり流れているような感じがしていて、そういうところも含めてこの場所が好きなんですが、「あれ?こんなにゆっくりしゃべってたんだ?!」と(笑) アトリエを見学させていただいた後は、鶏舎や畑も見せていただきながら、養父の自然を胸いっぱいに吸い込んですっかり生まれ変わったような一日でした。 上垣さんのもとには、彼の実践するビジネスモデルに感銘を受け、見学に訪れる人も多いそう。その道のりは単純にまねできるものではありませんが、これまでのやり方にとらわれず、変えるべきところは柔軟に変え、そして自分が本当に大切にしたいものと、皆が幸せになれる仕組みを考え実践し続ける上垣さん。その姿やお話してくださった色々な考え方には、年齢や業種に関わらず、あらゆる人へのインスピレーションの種が一杯に輝いているように見えました。 気づけば4時間も経っていた濃密な取材。夕暮れの山を背に、取材チームはそれぞれ色々な事を想いながら帰路に着きました。皆さんも、「こんなお話が今の悩みにマッチしていた」、「こんなところがもっと知りたい!」など、感想があればぜひシェアしてみてください!

上垣家の鶏たち。毎日手作りの餌をいっぱい食べて、元気に暮らしています。農場には肥料を、家族と上垣さんのお菓子には卵を分けてくれる存在。一羽一羽がつやつやフワフワ生き生きとしていて、こんなにハッピーな鶏がいるんだ!という驚きと、広い鶏舎に近づくとみな嬉しそうに集まってくる様子の可愛らしさに心溶かされたひとときでした。

養鶏や養蜂を手がけ、鶏ふんを利用した循環農法の麦畑自然農場で野菜を育てる、上垣さんのお父様。畑を見せていただいた時に、肥料や飼料まで何が入っているかを知って農業に使用することの大切さ、養蜂のシーズンや仕組みなどを教えてくださいました。畑にはブロッコリーやキャベツが植わっていて、お家の近くのもう一つの畑にはルバーブも。自分たちの食べるものや商品として提供するものの事をしっかり理解でき、自分たちの目で見て選ぶことができる環境がいかに豊かで恵まれたものかを改めて感じました。 上垣さん、ご家族の皆様、本当にありがとうございました!

<プロフィール>

上垣河大/うえがき こうだい 1989年兵庫県養父市生まれ。中学生の頃から家業である農業・養鶏・養蜂の仕事を始める。2009年、洋菓子マウンテン入店。お菓子とショコラを基礎から学び、2012年からはショコラを任される。2014年に独立。毎年ジェイアール京都伊勢丹にて開かれるショコラの祭典「サロン・デュ・ショコラ京都」には自身のブランド、ルフルーヴ(le fleuve)として、2016年から出店を続けている。ショコラのコンテスト、ジャパン・ベルコラーデ・アワード2017では最終審査進出、入賞。2019年より、「サロン・デュ・ショコラ東京」での出店。2020年世界的なチョコレートのコンテストICAアジアパシフィック部門で最高金賞受賞。1次世代の若手ショコラティエとして活躍を期待されている。(公式ウェブサイトより)

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